Comatonse Recordings

ピカ=ドン / 愛の爆弾

ピカ=ドン (ジェームズ・テニー, 1991)

神田佳子, 佐々木啓恵, 稲野珠緒, 服部恵 (打楽器), 有馬純寿 (エレクトロニクス)

機械仕掛けの神 (ジェームズ・テニー, 1982)

神田佳子 (タムタム), 有馬純寿 (エレクトロニクス)

愛の爆弾 (テーリ・テムリッツ, 2003)

テーリ・テムリッツ (上映・パフォーマンス)

*ポスト・パフォーマンス・Q&Aあり

9月11日 (日)

18:30開場 / 19:00開演 / 2,500円 (1ドリンクつき)

 

ベル研究所で最初期の電子音楽研究に関わり、ケージ的な思想を吸収しつつも、ゲシュタルト心理学や情報理論を取り入れ独自の科学的な音楽理論と作曲法を確立したジェームズ・テニー(1934〜2006)は、ニューメキシコ州・アラモゴードの核実験場近くの出身。1945年には11歳、その後パートナーと飼い犬をガンで失い、本人も2006年にガンで他界しています。

 

観客を取り囲む4本のスピーカーで再生される「証言」と4人のパーカッション奏者のための作品『ピカ=ドン』は、そのテニーが科学との和解を望み書いた、まさに現代の音楽。『機械仕掛けの神』は、同じく4本のスピーカーとディレイシステムによって、空間そのものが発する音を蓄積し飽和に至らせる、テニーが自身の電子音楽への「ポストスプリクト」と呼んだ作品。ライブでしか十全には体験できない2作品、ともに日本初演となります。『ピカ=ドン』は日本語字幕つき。

 

* * *

 

クラブ・シーンの「互いを愛し合おう」という耳を聾するほどの願いは、閉ざされた扉の向こう側で何ごとかが行なわれている、隠蔽された環境と切り離すことが出来ない [...] 愛と調和の歌よりも、矛盾する愛の相違の音に、私は憧れる。失恋の歌やトーチソングではなく、妨げられた戦略と何層にも重なった趣意に。

 

愛の爆弾』は、イデオロギー装置としての「愛」の諸相を批判的に考察するテーリ・テムリッツの上映=パフォーマンス。2003年の発表以来、世界各地で上演を重ねています。メインストリームの音楽に充満する「愛」のメッセージ、そしてホロコーストの生存者に対して「永遠の愛を感じる、邪な感覚」までをも「非本質的トランスジェンダリズム」の視点から鮮やかに切る、この作品のアプローチの同時代性は増す一方です。英語・日本語バイリンガル。ポスト・パフォーマンス・Q&Aには、ジェームズ・テニーのパートナーであり、『ピカ=ドン』にも声で参加、現在カリフォルニア芸術大学とREDCAT(ロサンゼルス)でプロデューサーとして活動しているローレン・プラット氏を迎えます。

神田佳子

 

東京藝術大学卒業及び同大学院修了。ドイツ・ダルムシュタット国際現代音楽夏期講習会で奨学生賞を2度受賞。ビクターエンタテインメントよりCDをリリース。これまでに、ソリストとして東京フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団等と共演や、国内外の音楽祭への参加の他、多くの作曲家の作品を初演し、若手作曲家との共同作業も多く行なってきた。正倉院復元楽器の演奏、古楽器との共演、ジャズピアノとのデュオ「TANAKANDA」を行なう等、時代やジャンルを超えた打楽器演奏の可能性にアプローチしている。また、作曲も手掛け、作品はニューヨークをはじめ、国内外で演奏されている。2014年には自作の打楽器アンサンブル作品集CD『かえるのうた』をリリースし、その中の4作品の楽譜も出版された。PERCUSSION TRIO [The Birds]、アンサンブル・コンテンポラリーα、東京現音計画のメンバー。

佐々木啓恵

 

東京藝術大学卒業。打楽器を有賀誠門、三上恭伸、マリンバを高橋美智子の各氏に師事。現在フリーの奏者としてあらゆるジャンルで活動する。1996・97年NHK・FMリサイタル出演。1999年シンガポール交響楽団の公演・レコーディングに参加。アンサンブルofトウキョウ、第12・13・15回アフィニス音楽祭ではティンパニストを務める。2014年、津田ホール主催のコンサートシリーズ「廻由美子&中川賢一の『春の祭典』+バルトーク」に出演、『2台のピアノと打楽器のためのソナタ』他演奏。また、劇団四季ミュージカル『夢から醒めた夢』(2003)『ライオンキング』(2006〜11)、東宝ミュージカル『マイ・フェア・レディ』『モーツァルト!』(2007)、『タイタス・アンドロニカス』(演出:蜷川幸雄、2004)、『兵士の物語』(演出:山田和也、共演:篠井英介、いっこく堂他、2001)等舞台物への出演も多い。2010年には、小椋佳コンサート全国ツアーに参加。バックコーラスも務める。PERCUSSION TRIO [The Birds] メンバー。

稲野珠緒

 

東京藝術大学卒業。モーニングコンサートにて藝大フィルと共演。同声会賞受賞。日本管打楽器コンクール2位入賞。京都芸術祭にて京都市長賞受賞。タン・ドゥン作品にてミュンヘンフィル、ロイヤルストックホルムフィル、サンタチェチェーリア国立アカデミー、NHK交響楽団、ネザーランド、リヨン、ニュージーランド、東京サントリーホールオペラに出演。ガウデアムス国際音楽週間、日蘭交流400周年記念演奏会に出演。ISCM・現代の音楽展において第3回佐治敬三賞受賞、サントリー芸術財団サマーフェスティバル「MUSIC TODAY 21」等に参加。現在オーケストラ、室内楽、ミュージカル等のマルチパーカッション奏者として活動している。プロフェッショナル・パーカッション音楽教室講師、アンサンブル東風メンバー。パーカッションアンサンブル、マレット・ガーデン主宰。

服部恵

 

東京藝術大学卒業。2007年、PENDIM国際打楽器コンペティション(ブルガリア)・デュオ部門において1位なしの2位、および特別賞受賞。2010年、国際マリンビストフェスティバル(チアパス、メキシコ)にて日本代表として招待演奏。2012年、イタリア打楽器コンペティション・ヴィブラフォン部門にて1位受賞。久石譲ピアノストーリーズコンサートツアー、NHK番組『The☆Star』久石譲特集にて共演、TV出演。日本テレビ開局55年記念企画『アナウンサーコンチェルト』にて音楽指導、TV出演。にっぽん丸、ぱしふぃっくびいなすなど豪華客船の国内外クルーズに乗船、演奏披露。ももいろクローバーZ、さまざまなアーティストのCD、テレビ番組、CM、映画音楽、シエナ・ウィンド・オーケストラのレコーディングに参加。フリーパーカッショニストとして、クラシック、ジャズ、ポップス、ラテンなどジャンルを問わず活動中。

有馬純寿

Photo by Saya Nishida

エレクトロニクスやコンピュータを用いた音響表現を中心に、現代音楽、即興演奏などジャンルを横断する活動を展開。ソリストや室内アンサンブルのメンバーとして、サントリー芸術財団サマーフェスティバル、コンポージアムなど多くの国内外の現代音楽祭に参加し、300を超える作品の音響技術や演奏を手がけ高い評価を得ている。東京シンフォニエッタのメンバーとして第10回佐治敬三賞を受賞したほか、平成24年度第63回芸術選奨文部科学大臣新人賞芸術振興部門を受賞。2012年より国内外の現代音楽シーンで活躍する演奏家たちと現代音楽アンサンブル「東京現音計画」をスタート、その第1回公演が第13回佐治敬三賞を受賞した。現在、帝塚山学院大学人間科学部准教授、京都市立芸術大学非常勤講師。

テーリ・テムリッツ

Comatonse Recordings

1968年生まれ。数々の受賞歴のあるマルチメディアプロデューサー、ライター、講演者、教育者、編曲家、DJであり、コマトンズ・レコーディングスのオーナー。作品のテーマはアイデンティティー・ポリティックス(ジェンダー、セクシュアリティー、階級、言語、民族、人種を含む)と商業メディアによる社会経済に対する批評を批判的に結びつけたものである。15以上のアルバム、数々の12インチシングルやビデオ作品をリリースしている。音楽と文化についての著述はいろいろな国で沢山の本や、学会誌、雑誌の中で発表されている。ノン・エッセンシャリスト(反本質主義者的)トランスジェンダリズムとクゥイアーに関する問題の講演者や教育者としてヨーロッパと日本のパネルディスカッションに参加している。2001年1月より日本在住。