Nervous Magic Lantern at Courtisane Festival, Gent on April 6, 2014
Nervous Magic Lantern at Courtisane Festival, Gent on April 6, 2014
 

ナーバス・マジック・ランタン

 

ライブ上映:ケン・ジェイコブス、フロ・ジェイコブス
作曲・演奏:恩田晃

 

舞台監督:尾崎聡
音響:葛西敏彦
機材・装置:吉田佳弘(株式会社エディスグローヴ)、浦弘毅(株式会社ステージワークURAK)
記録:原真人(録音)、松尾健太(映像)、前澤秀登(写真)

 

11月3日(火・祝)18:45開場/19:00開演

*関連上映:10月17日(土)〜10月31日(土)

前売 2,500円/当日 3,000円

前売お取り扱い:Peatix

 

フィルムもビデオも使わない「神経の幻灯」と「日常の音」から現出する3Dの政治的風景

 

フィールド・レコーディングを用いて記憶のエッセンスを召還するかのような『カセット・メモリーズ』で知られる恩田晃はもともと写真家であり、十代ですでにジョナス・メカスなど映像作家の影響を強く受けていました。実験映画のリサーチのためニューヨークをたびたび訪れ、ついには移住し、以降恩田は世代を超えて映像作家たちとの交流を深めていきます(マイケル・スノウ、アラン・リクトとのトリオもその結実のひとつです)。『ナーバス・マジック・ランタン』は、恩田が最も敬服する映像作家ケン・ジェイコブスによるライブ上映パフォーマンス。ジェイコブスがパートナーのフロと共に、フィルムもビデオも用いない自作映写機を手で操作しながら、フリッカーによる視差効果を活用したメガネ不要の3D映像をリアルタイムで作り出し、2007年以来恩田がライブで音響を担当しています。

 

©Michiel Devijver

歯に衣着せない政治的考察に満ちたジェイコブスの映画作品に比して一見抽象的な『ナーバス・マジック・ランタン』の3D映像は、しかし、私たちの知覚を規定するイデオロギーそのものに直接介入してきます。「私たちはもっと深いところ、事物のあり方に関する我々の観念に挑戦する何か、不可能な何かへと踏み込んでいく」(ジェイコブス [1])。そしてスタジオ録音の人工性を嫌うジェイコブスが恩田に出したリクエストは、「日常の音」というものでした。1990年代から改良が重ねられてきた『ナーバス・マジック・ランタン』という発明=作品=パフォーマンスには、ジョン・ゾーンをはじめ数々の音楽家が関わってきました。そして音を「日常生活の描写でもなく、全ての音の等価性でもなく、より大きな何かにつなげていく、私たちの生そのものをアートとして具現化させていく」と言う恩田とともに、このプロジェクトは現在最も進化した状態にあります。

©Michiel Devijver
 

歯に衣着せない政治的考察に満ちたジェイコブスの映画作品に比して一見抽象的な『ナーバス・マジック・ランタン』の3D映像は、しかし、私たちの知覚を規定するイデオロギーそのものに直接介入してきます。「私たちはもっと深いところ、事物のあり方に関する我々の観念に挑戦する何か、不可能な何かへと踏み込んでいく」(ジェイコブス [1])。そしてスタジオ録音の人工性を嫌うジェイコブスが恩田に出したリクエストは、「日常の音」というものでした。1990年代から改良が重ねられてきた『ナーバス・マジック・ランタン』という発明=作品=パフォーマンスには、ジョン・ゾーンをはじめ数々の音楽家が関わってきました。そして音を「日常生活の描写でもなく、全ての音の等価性でもなく、より大きな何かにつなげていく、私たちの生そのものをアートとして具現化させていく」と言う恩田とともに、このプロジェクトは現在最も進化した状態にあります。

 

やっとケン・ジェイコブスの芸術がどんなものであるかの問に答えられそうだ。それは幸福の芸術である。 [...] 彼の形 (shapes) と形態 (forms) はわれわれの中に輝かしい状態と形態を送りこみ、覚醒させ、いやむしろ作り出す。体中を幸福がかけめぐるように感じるだろう。無知な者、愚かな者の幸福ではなく、完全に覚醒している者の幸福が。はっきり意識されている幸福が。それが芸術とLSDの相違である。

ジョナス・メカス [2]

 

このパフォーマンスによる「奥行き」の体験は上の記録映像や写真では絶対にお伝えできません。82歳、22年ぶりの来日となるケン・ジェイコブス。初期映画からデジタル・3D技術まで、映画の表現史と技術史を問い直し続けた60年のキャリアをプリミティブかつ先進的なマジック・ランタン=「幻灯」に凝縮する渾身のパフォーマンスをお見逃しなく。

 

*フリッカー効果を全面的に使用したパフォーマンスです。ご注意ください。

 

関連上映(共催:イメージフォーラム

ジェイコブス映画の集大成『Star Spangled to Death』(1956–60/2003–04年、440分)他

 

10月17日(土)〜10月31日(土)

前売 1,200円〜2,300円/当日 1,100円〜2,500円

*10月31日(土)は上映前に監督舞台挨拶を予定
上映スケジュール・料金詳細

前売お取り扱い:Peatix

*10月31日(土)は上映前に監督舞台挨拶を予定
上映スケジュール・料金詳細

 

*映像中に「6時間45分」とありますが、実際は7時間20分です。
 

Star Spangled to Death

死に至る星条旗
1956–60/2003–04年、デジタル、440分(日本語字幕付)

 

アナーキーなストリート・シアター、無数・無名のファウンド・フッテージ、大量のテクストが織り成す、合衆国史の批判的考察と9/11以降のヴィジョン。ジェイコブスの50年にわたる創作活動、技術的実験、思索と喜びと怒りの全てがぶちこまれた集大成にして実験映画の金字塔。本邦初、440分一挙オールナイト上映! 途中休憩あり。

*3Dメガネ不要。フリッカーを用いています。ご注意ください。
 

Two Wrenching Departures

ふたつのつらい別れ
1989/2006年、デジタル、90分(日本語字幕付)

 

1989年に1週間のうちに相次いで他界した『Star Spangled to Death』にも出演の共犯者2人、ジャック・スミスとボブ・フライシュナーを追悼する、最も美しい3D作品のひとつ。同一のプリントを2台の映写機でずらし重ねて上映することで3D効果を生む「ナーバス・システム」によるパフォーマンスとして初演された。

 
 

Tom, Tom, the Piper’s Son

トム、トム、笛吹きの息子
1969–71年、16mm、115分(サイレント)

 

1905年に撮影された、マザーグースの童謡に基づく同名の「一幕物」初期映画(8分、監督不明)を劣化したペーパープリントから復元、それを2時間にわたってサンプリング/リミックスし、忘れられた無名のフィルムに秘められた情報を極限まで引き出した「構造映画」の傑作にして古典。

*3Dメガネ不要。フリッカーを用いています。ご注意ください。
 

Return to the Scene of the Crime

犯行現場への帰還
2008年、デジタル、93分(日本語字幕付)

 

「原作」(1905年)から約100年後、『Tom, Tom, the Piper’s Son』(1969–71年)のアプローチをデジタル3Dでさらに押し進め、「犯行」(トム、トム、笛吹きの息子、豚を盗んで逃げてった…)と同時多発する数百の出来事にあらゆる角度から光をあてる、狂熱の映画賛歌。

*映像中に「6時間45分」とありますが、実際は7時間20分です。
 

Star Spangled to Death

死に至る星条旗
1956–60/2003–04年、デジタル、440分(日本語字幕付)

 

アナーキーなストリート・シアター、無数・無名のファウンド・フッテージ、大量のテクストが織り成す、合衆国史の批判的考察と9/11以降のヴィジョン。ジェイコブスの50年にわたる創作活動、技術的実験、思索と喜びと怒りの全てがぶちこまれた集大成にして実験映画の金字塔。本邦初、440分一挙オールナイト上映! 途中休憩あり。

*3Dメガネ不要。フリッカーを用いています。ご注意ください。
 

Two Wrenching Departures

ふたつのつらい別れ
1989/2006年、デジタル、90分(日本語字幕付)

 

1989年に1週間のうちに相次いで他界した『Star Spangled to Death』にも出演の共犯者2人、ジャック・スミスとボブ・フライシュナーを追悼する、最も美しい3D作品のひとつ。同一のプリントを2台の映写機でずらし重ねて上映することで3D効果を生む「ナーバス・システム」によるパフォーマンスとして初演された。

 
 

Tom, Tom, the Piper’s Son

トム、トム、笛吹きの息子
1969–71年、16mm、115分(サイレント)

 

1905年に撮影された、マザーグースの童謡に基づく同名の「一幕物」初期映画(8分、監督不明)を劣化したペーパープリントから復元、それを2時間にわたってサンプリング/リミックスし、忘れられた無名のフィルムに秘められた情報を極限まで引き出した「構造映画」の傑作にして古典。

*3Dメガネ不要。フリッカーを用いています。ご注意ください。
 

Return to the Scene of the Crime

犯行現場への帰還
2008年、デジタル、93分(日本語字幕付)

 

「原作」(1905年)から約100年後、『Tom, Tom, the Piper’s Son』(1969–71年)のアプローチをデジタル3Dでさらに押し進め、「犯行」(トム、トム、笛吹きの息子、豚を盗んで逃げてった…)と同時多発する数百の出来事にあらゆる角度から光をあてる、狂熱の映画賛歌。

*映像中に「6時間45分」とありますが、実際は7時間20分です。
 

Star Spangled to Death

死に至る星条旗
(1956–60/2003–04年、デジタル、440分、日本語字幕付)

 

アナーキーなストリート・シアター、無数・無名のファウンド・フッテージ、大量のテクストが織り成す、合衆国史の批判的考察と9/11以降のヴィジョン。ジェイコブスの50年にわたる創作活動、技術的実験、思索と喜びと怒りの全てがぶちこまれた集大成にして実験映画の金字塔。本邦初、440分一挙オールナイト上映! 途中休憩あり。

 
*3Dメガネ不要。フリッカーを用いています。ご注意ください。
 

Two Wrenching Departures

ふたつのつらい別れ
(1989/2006年、デジタル、90分、日本語字幕付)

 

1989年に1週間のうちに相次いで他界した『Star Spangled to Death』にも出演の共犯者2人、ジャック・スミスとボブ・フライシュナーを追悼する、最も美しい3D作品のひとつ。同一のプリントを2台の映写機でずらし重ねて上映することで3D効果を生む「ナーバス・システム」によるパフォーマンスとして初演された。

 
 

Tom, Tom, the Piper’s Son

トム、トム、笛吹きの息子
(1969–71年、16mm、115分、サイレント)

 

1905年に撮影された、マザーグースの童謡に基づく同名の「一幕物」初期映画(8分、監督不明)を劣化したペーパープリントから復元、それを2時間にわたってサンプリング/リミックスし、忘れられた無名のフィルムに秘められた情報を極限まで引き出した「構造映画」の傑作にして古典。

 
*3Dメガネ不要。フリッカーを用いています。ご注意ください。
 

Return to the Scene of the Crime

犯行現場への帰還
(2008年、デジタル、93分、日本語字幕付)

 

「原作」(1905年)から約100年後、『Tom, Tom, the Piper’s Son』(1969–71年)のアプローチをデジタル3Dでさらに押し進め、「犯行」(トム、トム、笛吹きの息子、豚を盗んで逃げてった…)と同時多発する数百の出来事にあらゆる角度から光をあてる、狂熱の映画賛歌。

 
©Michiel Devijver

 

©Michiel Devijver

ケン・ジェイコブス|1950年代にゲリラ・シネマとして、出身地ニューヨークの路上で、アナーキーで熱狂的、かつ鋭敏な政治性を持った即興劇的なパフォーマンスを撮影しはじめる。早くから初期映画と実験映画に魅了され、埋もれている既存の映像から着想し、それらを素材として作品を作ることに徐々に関心を持つようになり、監督も出演者も不明な8分の初期喜劇映画『トム、トム、笛吹きの息子』(1905)のナラティブとイリュージョニズムを解体、操作、拡張して息をもつかせぬ2時間の純粋映画体験を作り出す『トム、トム、笛吹きの息子』(1969)で評価を確立。初期の「原始的」映画、そして19世紀の写真は、一貫してジェイコブスの作品の根本にあり、映画や映画技術の美学的、イデオロギー的、テクノロジー的限界を総合的に批判するための主要ツールとして機能している。常に新旧の映像テクノロジーに関心を持ち、デジタル、初期映画/写真、3D映像が出会う場としてのビデオの可能性を追究、19世紀と21世紀を魔術的に接続している。

 
Photo by Heidi Bohnenkamp

 

Photo by Heidi Bohnenkamp

恩田晃|音楽家、パフォーマー、ヴィジュアル・アーティスト。日本に生まれ、ニューヨーク在住。四半世紀に渡って録り溜めたフィールド・レコーディングによる「サウンド・ダイアリー」を用いたプロジェクト『カセット・メモリーズ』で知られている。カセット・ウォークマンを楽器として使用。録音を行なうだけでなく、エレクトロニクスとともに操りパフォーマンスを行なう。ジャンルを越境し、美術、映像、ダンスの分野でも活動。マイケル・スノウ、ケン・ ジェイコブス、ラハ・レイシニァ、アラン・リクト、ローレン・コナーズ、鈴木昭男、横田大輔らとコラボレーションを継続している。不断に旅をつづけ、欧米のみならず、南米、アジアでも演奏、展示を行なう。パリのルーブル美術館、ポンピドゥー・センター、ロンドンのICA、BBC、ロッテルダム国際映画祭、ニューヨークのThe Kitchen、MoMA PS1、ポートランドのTBAフェスティバル、韓国のナム・ジュン・パイク・アートセンターなどで作品を発表してきた。

 

[1] Ken Jacobs, Notes for a Magic Lantern Performance, January 28, 2012

[2] ジョナス・メカス(飯村昭子訳)『メカスの映画日記 ニュー・アメリカン・シネマの起源 1959〜1971』(フィルムアート社、1974年)310頁